研究概要 |
平成4年度においては,Yb^<3+>増感,Er^<3+>またはTm^<3+>活性化蛍光材料についてそのデバイス・材料・機構について研究を行った。新たに開発された980nm発振半導体レーザを用い主としてフッ化物ガラスを素材として,デバイスを構築した結果,高輝度の青色または緑色光源が実現できることが明らかにされた。赤外光から可視光への変換効率は,材料の大きさ,容器など構造に大きく依存することが明らかになった。これまで得られた変換効率の例は,緑色発光について2.0%,青色発光についていついて0.5%程度である。この結果は以前この種のデバイスが研究されていた時期のものに比べて数十倍の改善に相当する。かかるデバイスのエネルギー散逸過程を明らかにするため,中赤外から紫外部にわたる発光特性を詳細に検討した。その結果,大部分の励起エネルギーはYb^<3+>イオンによる赤外発光の形で失われ,可視光に変換される部分は小部分であるこが判明した。光閉じ込め効果を定量的に検討するため,大きさと表面反射係数のことなる多くの波長変換材料について,Yb^<3+>励起状態寿命の測定を行った。かかる結果を,Yb^<3+>イオンによる再吸収効果を取り入れたレイト方程式と比較することによって,Yb^<3+>イオンの輻射減衰速度および非輻射減衰速度を決定した。このようにして求めた輻射減衰速度は,光学的吸収断面積から算出した結果と良好な一致をみている。これらの結果から,赤外可視変換効率の大幅な向上のためには,小体積でしかも高い閉じ込め構造をもち,非輻射減衰速度が小さく,Yb^<3+>濃度が高く,しかも光学的損失の小である材料が必要であることが明らかにされた。光吸収スペクトルを精密に測定し,MacCumberの関係式から発光スペクトルを求め得ることを示した。デバイスの変換効率制約する要因として温度クエンチング効果があることが判明し,その原因が主としてYb^<3+>イオンの非輻射減衰にあるこを明らかにした。平成5年度以降においては,変換効率の格段の向上をはかるため,結晶性の透明材料の製作を行ない,構造的改善を試みる。これと並行して青色発振レーザについての検討を開始する。
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