1.PVDFや(VDF/TrFE)共重合体などの有極性有機分子を試料として、真空蒸着薄膜の構造制御を試みた。基板に付着直後の不安定な分子に直流高電界を印加することにより、強誘電性の薄膜の作製が可能であることが判明した。また、非接触電極を有する測定セルを用い、D-E測定や誘電率の測定を行った結果、ヒステリシス曲線や誘電率のピークが観測され、強誘電の電気物性を調べる有効な手段となることが確かめられた。 2.高分子強誘電体を真空蒸着法で単結晶基板上に成膜し、FT-IRを用いて結晶構造、相転移挙動ならびに分子配向性を調べた。NaCl基板上に作製した試料は、昇温時の相転移温度はスピンコート膜に較べて著しく(約20℃)低下し、降温時では一致するヒステリシス・ループを示した。また、蒸着に伴う試料の熱分解、すなわち、分子量の低下は相転移挙動に影響しながらも、分子本来の機能性は保持されることが確かめられた。 3.PVDFの低分子量試料でオリゴマーの一種であるVDFテロマー薄膜の構造および分子配向評価をX線回折ならびにFT-IRにて行った。その結果、バルク状態ではIII型結晶と同じ構造を安定相としてとる事が明らかになった。また、真空蒸着膜ではII型結晶を形成し、その分子配向は基板に対して分子鎖が垂直に配向した長周期構造をとることが確かめられた。
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