研究概要 |
本研究は,ウィグナー分布関数を光学的に実現することにより,時間信号および空間信号の局所的周波数解析を並列的に瞬時に行う手法を開発するとともに,光計測・光情報処理の諸問題に対するその手法を応用するものである.本年度は,時間信号のためのウィグナー分布関数について研究を行った.また,研究が当初の計画に比べて早く進展したため,ウィグナー分布関数の概念を情報処理光学系の設計に応用する方法についても研究を行った. 1.時間信号に対する光学的ウィグナー分布関数処理システムの実現:平成4年度に開発したウィグナー分布関数光学系の入力面に一つの音響光学素子を配置し,さらにプリズムを開口とミラーに置き換えることにより,ビデオ信号などの時間的信号のウィグナー分布関数を実現するための光情報処理システムを実現した. 2.ウィグナー分布関数による各種光接続の実現:ウィグナー分布関数が信号の空間と空間周波数の振る舞いを同時に表現するという特性に基づいて,光情報処理におけるBanyan,完全シャッフルおよび循環シフト光接続のための位相フィルタの新しい設計法を提案した.これらの位相フィルタを計算機ホログラムとして製作し,従来の同機能の光学系と比べて極めて簡単,コンパクト,かつ軽量な光接続光学系を実現した. 3.ウィグナー分布関数による光ニューラルネットワーク接続の実現:上述の光接続法の手法をさらに発展させ,光ニューラルネットワークにおけるシナプス接続のためのコンパクトな光学系を提案し,1次元および2次元のシナプス接続光学系を実際に製作して,提案したシステムの有効性を実験的に示した.さらに,同様の考えに基づき,行列・行列積を行う光演算光学系を提案し,その有効性を実験的に示した.
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