ガウス光束をレンズで集束した状態で、被測定色素膜をこの光束のなかに入れ、光軸に沿って移動させながらその透過した光量を測定する。透過した全光量の測定から非線形感受率χの虚部χ''を得ることができるし、光学軸上に置いた小さいピンホールからの透過光量の測定から実部χ'を求めることができる。この方法をZ走査法という。 この方法は簡便であり、吸収の少ない試料には有効であることは知られている。ここでは、飽和吸収を示す色素膜-アクリジンオレンジ膜-についてZ走査法によるχの測定について検討した。アクリジンオレンジ膜についての飽和吸収による透過率の光強度依存の実験と比較したが、両者では良い一致を示さなかった。飽和吸収が強い場合には、光束の断面での透過した光量の空間分布の変化を従来のZ走査法の理論に取り込む必要があるので、必ずしもZ走査法は簡便であるとは言えないことがわかった。しかし、χ'の符号をきめるには便利である。したがって、吸収の強さが光強度に依存するような試料でのχの決定には、透過率の光強度依存性による方が、Z走査法よりも有効であると考えている。 マイケルソン干渉計の両鏡(既知の特性を持つ位相共役鏡を使用)内に被測定色素膜をいれ、既知位相共役鏡と被測定色素膜からの位相共役光の干渉実験からχの実部χ'と虚部χ''を決定することができることがわかった。今後この研究を発展させるつもりである。
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