研究概要 |
本研究の目的は低照度の物の見え方を心理物理学的実験により定量的に測定し,その結果に基づいて薄明視における視環境をシミュレーションすることにある. 昨年度までに,薄明視における色の見えの測定を行った.この成果を論文にまとめ,「光学」に発表した.その実験結果はシミュレーションに有用なデータとなったが,薄明視レベルにおける色の見えの個人差が大きいという問題点も提起された.そこで,本年度の研究では,この薄明視レベルにおける色の見えの個人差の原因の一つが瞳孔径の個人差にあると考え,色の見えの測定と同時に各被験者の瞳孔径を測定し,瞳孔面積と色の見えにおける色味の強さに相関があることを見いだした.この成果は1994年7月の照明学会全国大会において発表する予定である.また,瞳孔径測定のために,赤外線ビデオカメラにより取り込んだ画像から瞳孔面積を求める画像処理システムを開発した. 得られた実験データに基づいて,明所視における測色値から薄明視における色の見えを再現するアルゴリズムを開発し,薄明視における色の見えをCRT上に再現した.また,実際の視環境についても,これをビデオカメラで取り込み,薄明視における視環境の見え方を再現した.しかし,まだビデオカメラによる測色値の予測に問題もあり,現在この問題解決方法を検討中であり,その結果を見て論文にまとめる予定である. また,動く物体に関する検出能については,運動検出の空間周波数特性を測定し,その結果を日本視覚学会1994年冬期研究会において発表した.
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