研究概要 |
本研究の目的はライトシフトを利用した非吸収型光検出装置を製作し,その光子数非破壊測定への応用を試みることである.ライトシフトの量は光強度すなわち光子数に比例し,また仮想遷移は光吸収を伴わないので,シフト量を何らかの方法で測定すれば光強度を非吸収的に計測することができる. 一般にシフト量は光周波数に比べて非常に小さいため直接測定することは困難であるが,円偏光を用いれば,基底状態の磁気副準位間のエネルギー相対シフトとして測定することが可能になる. 今年度はライトシフトの量を感度よく測定するために,パラメトリック共鳴を利用した.さらに,状態の準備領域,相互作用領域,状態の読みだし領域を分離することで,理論モデルと実験系の対応関係がより明瞭になるようにした.ただし,セル内の熱運動する原子は上記の領域を順序良く通過するとは限らないので,検出感度はかなり低下してしまった. 原子ビームを用いることによりこの問題は解決することができる.また,原子ビームとして,レーザ冷却により十分減速されたものを用いれば,相互作用時間が長くとれるので,感度は飛躍的に向上するものと期待される.レーザ冷却については,装置を作製,Rb原子を1mK以下に冷却できるようになった.また,トラップの構成を工夫することで,スピン偏極した冷却原子も準備できるようになった.現在,非破壊測定装置と組み合わせる準備を進めている. 研究結果の一部は93年春の物理学会などで発表したが,全体については近く,論文としてまとめる予定である.さらに,本研究に関連して,量子波と古典波のガリレイ変換に関する理論的研究を行なった.
|