溶液試料の直接分析ならびに質量分析用イオン源への応用を目的として新しいタイプのダブルボア放電管型MIP光源を考案し、有限要素法を用いて共振器の回析を行い、装置を試作した。このMIPでは石英放電管の内径が共振器内部で不連続に変化する構造を持っており、不連続点の相対的位置を変えることによってプラズマの状態を変化させることができる。本研究では(a)有限要素法の計算結果を確認し、(b)プラズマと放電管壁の接触を避けて中心軸上に安定なプラズマを発生させる条件を明らかにするため、内径の不連続位置を変えてプラズマ特性の測定を行った。 その結果、放電管の内径不連続位置を10mmとしたときにプラズマ温度、電子密度がいずれも最大となった。また、溶液試料を導入することでプラズマ温度、電子密度がいずれも高くなった。この実験条件下ではプラズマにLTEが成立していないこと、また、入力を大きくしてもLTEに近づかないことが確認された。溶液試料の導入時には、アルゴン発光強度の減少に対して、電子密度は約2倍になるので、このダブルボア放電管型MIP光源では、分析種の励起は準安定状態のアルゴンによる非熱的な励起ではなく、高速電子による熱的な励起が優位であると推測される。 また、従来MIPで問題となっていた発熱による伝送ケーブルや共振器の熱焼損は、平均電力を低い値に保ったまま、ピーク出力大きい大電力マイクロ波(数百W、数十mus)でパルス動作させることにより避けられることを確認した。また電子密度、プラズマ温度は数mus以下の時定数でパルス電力に追従することがわかった。
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