研究概要 |
1)PVDF(ポリフッ化ビニリデン)膜を用いて局部で発生した熱を局部で検出するためのセルを開発した.すなわち,PVDF膜の試料に接していない面の電極を細い金属のピン(直径0.6mm)とすることにより実現した.さらに,このピンを走査する際にPVDF膜を傷つけないようにするためにピンが可動するような構造にした.このセルを用い,モデル試料(アルミ板の内部に直径0.5mmの穴のあいた試料)を用いて,シグナルの変調周波数依存性を測定した.その結果,現在のセルで変調周波数約100Hzまで測定可能であることがわかった.したがって,このセルが本研究の目的を達成するのに十分な感度を有することがわかった. 2)新しく開発したセルの性能を確認するために,このセルと従来用いられていたセルとでモデル試料の振幅イメージおよび位相イメージを種々の変調周波数で測定した.その結果,変調周波数が低いときは従来のセルでは内部の穴の存在を検出できないが,新しいセルでは8Hzから120Hzまでの全ての変調周波数で穴の存在を検出できることがわかった.また,この新しいセルでは,変調周波数が高いほどシグナル強度は弱くなるものの,穴の位置でのピークの半値幅は減少し,空間分解能が向上することがわかった.さらに,全ての変調周波数において振幅イメージに比べて位相イメージの方が感度,空間分解能とも良いことがわかった. 3)熱波断層像を得るためには,光の照射位置と熱の検出位置が一直線上にない場合のデータも必要である.そこで,新しいセルを用いて光の照射位置と熱の検出位置の間隔を変えてシグナルを測定した.その結果,変調周波数50Hzで間隔が20mmの場合まで測定可能であることがわかった.したがって,このセルを用いることにより,断層像を得ることができるものと考えられる.
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