近年のLSI高集積度化に伴って、投影露光法(ステッパー)におけるパターン微細化が強く要求されている。しかし高分解能化による焦点深度低下が問題化している。本研究は3次元OTFに基づく結像特性の評価と能動的結像合成の手法を縮小投影光学系に適用、高い分解能と深い焦点深度とを両立させた、透過度分布付円環状開口フィルターを使用する能動的投影光学系の実現を目的とする。 第1年度においては、コヒーレント傾斜(ホロコーン)照明時の3次元結像特性の理論解析と顕微鏡光学系での特性計測を試み、これを元に瞳面での円環状開口による焦点深度改善の効果を定量的に評価した。この様な照明・光学系のもとでは高分解能・深い焦点深度が達成できるが、中域の空間周波数情報の大幅減少と投影像コントラストの低下が確認された。中域OTFの補償手法として、円環状開口フィルターに対し部分的に透過度、又は円環幅を変化させ、照明光をホロコーン状に光軸に対し一定傾斜角のまま回転させるとともに開口フィルターを同期させつつ回転(変調)させる能動的投影方式を提案している。透過度分布付き瞳面開口フィルターについては第2年度に微小ピッチ(10数ミクロン)の金属メッシュを吸収体として円環幅可変型瞳面開口フィルターの所定部分に取り付けたものを試作した。この瞳面開口フィルターを用いた能動的投影光学系評価実験の結果、金属メッシュを用いない場合と比較して1.5倍程度のコントラスト向上が認められた。現段階では吸収体での損失による光強度の低下が大きいこと、並びにコントラスト改善の程度が予想より少ないことにより実用的技術に直結するものではないが、将来的な焦点深度拡大露光法として期待できるものである。
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