瀬戸内海の瀬戸大橋に見られるように、海峡を跨ぐ架橋や、航路上に巨大架橋が建設される昨今、これらの海洋構造物は、電子航法の電波に影響を及ぼし、レーダ映像障害、ロランCやデッカ電波障害などを発生する。その結果、船舶の衝突や船位の喪失を招く恐れが生じて、航法上の障害となることが分かり、社会問題となってきた。本研究ではこうした海洋構造物、とりわけ船舶が多数輻輳する海域に建設される巨大架橋を原因とする電波航法障害、並びに陸地近傍海域での電磁波環境問題を取り上げ、障害発生の理論的解明を研究目的とした。 本年度は、計画に従い、次の成果を得た。 1.電波航法の障害が発生する海域は、多数の船舶が航行している場所であり、測定や実験に際して他の船舶の交通を妨害しないよう工夫した測定装置、そして障害の様相と程度を定量的に収集できる記録装置などが必要で、この為、現有設備であるロランCなどの電波航法計器及び新しく開発したレーダ信号デジタル化記録装置をコンピュータなど情報関連機器と接続し、システムを完成させた。 2.開発してきたレーダ情報解析システムにより、沿岸部における架橋のレーダ映像障害の測定を行った。ここで、問題となっている現象の定量化、情報化そしてファイル等へ記録化し、抽象化する研究を行い、映像障害の様相を明らかにした。 3.陸地近傍海域における航法用100kHz帯電磁波擾乱の問題に関して、次の理論的解明を行った。沿岸から4000mまでの海岸付近における100kHzロランC電波の位相測定を行い、その結果を理論的に説明することで、陸地近傍付近の反射波による位相のじょう乱メカニズムを明らかにした。
|