研究概要 |
瀬戸内海の瀬戸大橋に見られるように,海峡を跨ぐ架橋や航路上に巨大架橋が建設される昨今,これらの海洋構造物は,電波に影響を及ぼし,障害を発生することが明るみになってきた。本研究ではこうした海洋構造物,とりわけ船舶が多数輻輳する海域に建設される巨大架橋を原因とする電波航法障害の解明を目的とした。 本年度は,次の成果を得た。 測定や実験に際して,他の船舶の交通を妨害しないよう工夫した測定装置そして障害の様相と程度を定量的に収集できる記録装置などを開発したが,それらの装置により航法障害の測定を行い,次いで理論的な解析を行った。その結果,次の内容を明らかにした。日本の近海には,100kHz帯の電波を用いた双曲線航法システムが配置されている。これらのシステムは測定位置の再現性が高いことから,漁業関係者に広く利用されている。近年,陸地近傍では瀬戸大橋に代表される巨大な会場建造物が出現し,その近傍海域の船位決定に大きな誤差が生じている。本論文では,南備讃瀬戸大橋による北九州デッカチェーンのデッカ電波のじょう乱について調査研究を行った。その結果,デッカ電波のじょう乱において,吊り橋構造の2本の主塔をそれぞれ微小垂直ダイポールアンテナとみなすことができた。デッカ局の4周波数の電界強度測定では,架橋西側の橋梁近傍を除く約0.18波長以上離れた場所で,高い周波数ほど電界強度の定在波が顕著に現れた。そこで到来一次波に,微小垂直ダイポールアンテナとみなす2本の主塔からの二次波が重畳するものとして,受信電界の理論式を導いて数値計算をしたところ,ほぼ測定結果を説明することができた。また,微小垂直ダイポールアンテナの静電容量は0.1〜0.2マイクロファラッド程度であることもわかり,巨視的に架橋を見るならば主塔を微小垂直ダイポールアンテナとみなすモデルを確立することができた。
|