大気圏再突入の際に発生する高エンタルピー衝撃波層では、淀み点温度が一万度以上にまで高くなると、物体への輻射熱伝達の影響が大きくなる。本研究では、その輻射熱伝達に対する物体寸法の影響を調べ、流体力学的な見地から決まる衝撃波離脱距離と、高エンタルピー流中のエネルギー緩和の特性長を比較することによって、スケール則を得た。 輻射によるエネルギー放出が流体のエネルギー流束に比べて十分小さい場合、衝撃波離脱距離は、輻射の影響を受けないで、流体力学的な関係のみに支配される。粘性を無視すると、衝撃波離脱距離はオイラー方程式を解くことによって得られ、その解は代表長を持たない相似解となる。これに対して、エネルギー緩和の特性長は流れ場の状態量と流速で決まり、物体形状とは相似関係にはならない。 上流速度が、10km/s以下の領域では、輻射を支配するエネルギー緩和距離は、衝撃波直後の電子並進温度に支配され、物体寸法とはほぼ独立の関係となる。これに対して、10km/s以上の速度における輻射熱伝達は、固体壁近傍の高電子密度の領域からのものが支配的になるため、物体寸法の増加に伴って増加する。 以上の研究成果は、再突入飛行物体の設計指針として役立てることができる。
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