研究概要 |
パルスジェットによる着火および燃焼は,希薄な混合気体の着火やNOx削減などに有力であるとされ,現在自動車エンジンなどに応用されようとしている。本研究は,自動車のプラグの大きさのパルスジェット発生装置によって,通常のプラグでは得られない燃焼条件下での着火燃焼を調べるとともに,パルスジェットの着火,燃焼機構の詳細を解明する。本年度は,装置の製作および着火限界と流体力学的機構の可視化の実験研究であるが,数値シミュレーションによる解析も行った。パルスジェット燃焼の装置では,パソコンによるパルスジェットの制御が重要な課題であったが,何回もの点火によって着火出来なかった実験が,コンピュータで制御することによって毎回着火するようになった。現在は,シュリーレンシステムを用いて,パルスジェットによる着火・燃焼を可視化している。数値解析による研究は,予定よりかなり進んでおり,パルスジェット燃焼器の副燃焼室ならびに希薄気体で満されている主燃焼室の燃焼を,二次元円筒対称ナビエ・ストークス方程式をTVD差分法を使って積分することでシミュレートした。過濃な酸水素混合気体で満たされている副燃焼室内で,上端,中間,下端の三ケ所において点火した場合,副燃焼室の未燃ガスがパルスジェットが発生する前にどれ程主燃焼室に流出するかなど実験では得られない情報が明らかにされた。また,副燃焼室の計算格子は最小で50μmの細かさのため,直接シミュレーション的な解が得られ,渦と火炎面との干渉の様子や副燃焼室内を上下する圧力波と火炎の干渉(バロクリニック効果)による火炎の変形の機構が明らかにされた。とくに,渦と火炎面との干渉では,完全な酸水素反応機構を使っているので,火炎面上でのOHの生成・消滅速度と流体力学との関係などが詳細に解明された。
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