研究概要 |
蒸着用イオンガン(最大出力1.5kV,30mA)を用いて、イオンビームによる宇宙材料劣化の研究を行った。宇宙基地軌道での主要成分である酸素イオンを、宇宙飛翔体の表面、構成材料として使用されるポリイミド、アルミニウム、銅、鉄、炭素、ガラスなどに照射し、材料の劣化速度、二次的に発生するイオン・原子の分析、二次イオンのエネルギー、材料表面での帯電と放電の研究を行った。劣化速度は薄膜の半透明試料を利用し、半導体レーザーダイオードの光の透過率の時間変化の計測から算出した。このエネルギーレンジでは、劣化速度がビームエネルギーに対しほぼリニアに増加することが分った。二次的に発生するイオンについてはイオン質量分析器で分析し、各試料からの二次イオン発生率を定量的に求めた。また、本年度は、イオンソースとしてキセノンで作動するイオンエンジンも使用し、二次イオンの生成率について、酸素で作動させるイオンガンの場合と比較した。酸素より重いキセノンの方が、二次イオン発生率が高いことが確認された。表面帯電と放電については、2種類のポリイミド(ユ-ピレックスS、R)について実験を行い、電荷蓄積時間、電荷量、放電波形、放電頻度を測定した。また、試料の温度を100度C以上まで上げて、放電と密接な関係があると思われる試料からのアウトガスが放電へ及ぼす影響について実験を行った。これらの研究結果は、本年1月の宇宙輸送シンポジウムと宇宙ステーションワークショップ、本年3月の宇宙エネルギーシンポジウムで報告するとともに、卒業研究論文3遍としてまとめられた。
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