母材の穴部(円とだ円)を覆うように試験膜を接着し、母材に繰返し負荷を与え、Fe膜(100μmと50μm厚さ)とTi膜(50μm厚さ)の疲労き裂伝ぱ試験を行った。また、BEMによる膜き裂解析を行い、計算した応力拡大係数幅ΔKにより膜疲労き裂伝ぱ速度da/dNを整理した結果、バルク材同様にパリス則が成立した。このように、提案した方法が膜材の疲労き裂伝ぱ試験に有効であることがわかった。また、膜き裂開口変位分布の測定結果から、Fe膜材ではき裂周辺に圧縮残留応力が生じており、バルク材同様有効応力拡大係数幅ΔKeffの評価が重要であった。そのΔKeffによるda/dNの整理では、膜材とバルク材の結果は一致した。一方、Ti膜ではΔKによるda/dNの整理でも、バルク材の結果とよく一致した。 次に、母材の予き裂を覆うように試験膜を接着し母材に繰返し負荷を与えると、予き裂開口変位量の大きい膜中央で疲労き裂が発生し、その後膜上での疲労き裂伝ぱ試験を行うことができた。本試験での特徴的なことは、膜疲労き裂伝ぱが予き裂開口に伴う膜き裂開口変位量Δφに支配されていることである。そして、鉄膜の疲労き裂伝ぱ速度とΔφの関係においては、バルク材の結果によく一致した。さらに、膜き裂長さが予き裂長さすなわち母材にき裂がない状態でも、膜き裂は停留せず伝ぱし続けることが、Fe膜およびTi膜で認められた。これは、膜き裂開口変位分布の測定からき裂開口応力分布を評価した結果、伝ぱした膜疲労き裂周辺の圧縮残留応力に釣合うよう分布する引張残留応力が、予き裂先端付近および前方の膜に生じるためであることがわかった。
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