短繊維強化複合材を対象としたマイクロメカニックス研究によって、次の二つのテーマの解明を試みた。 1.短繊維強化複合材の微視的破壊と非線形挙動 繊維、母材の材料特性および繊維の寸法、配向さらに界面はく離を考慮した短繊維強化プラスチックスの引張りによる非線形応力ーひずみ挙動の数値シミュレーションを行って、短繊維強化プラスチックスの非線形応力ーひずみ挙動に及ぼすはく離進展の限界エネルギー解放率、繊維のアスペクト比および繊維の配向分布特性の影響について検討した。得られた主な知見は以下の通りである。(1)限界エネルギー解放率の繊維のはく離面積に対する増加率であるdGc/dAは、はく離した界面での単位面積当たりの摩擦力に比例する量であると考えることができるが、dGc/dAが大きくなると最大応力とそのときのひずみはともに大きくなることがわかった。(2)繊維のアスペクト比が大きくなると、縦弾性係数および最大応力はともに大きくなった。特に最大応力はその増大が顕著であった。(3)繊維の配向分布特性を変えた数値シミュレーションを行った結果縦弾性係数および最大応力はともに一方向材、実験で用いた射出成形材、二次元ランダム配向材の順に大きくなった。また、繊維の配向分布特性が一方向に近づくにつれて最大応力時のひずみは小さくなることがわかった。 2.短繊維強化SMC複合材中の応力腐食によるき裂進展 ガラス短繊維を強化材とするSMC複合材からCT試験片を作成し、塩酸環境下でき裂進展試験を実施した。実験結果からき裂進展速度は、近似的にき裂先端での応力拡大係数のべき乗形で表わされることを確認した。さらに、このべき乗則についてマイクロメカニックスの観点から考察を行った。
|