本研究では、単軸負荷条件下において、接着層に均一な引張とせん断の組み合せ応力状態を得るため、 (1)突合せ接着継手の軸芯を高精度にずらす方法 (2)きりそぎ角をもつ突合せ接着継手(スカーフ継手)を用いる方法の2つの方法について検討した。 まず、有限要素法により(1)(2)の場合について接着層における応力分布を求めた。(1)の突合せ接着継手の軸芯をずらした場合には、軸芯からの偏差角が30°以下の領域すなわち、せん断応力が支配的な領域において、均一な応力分布が得られるが、偏差角が30°以上になると接着層の応力分布が不均一になることを確認した。(2)のスカーフ継手においては、接着層はきわめて均一な引張とせん断の組合せ応力が得られるが、スカーフ角が15°以下に減少すると、やや応力分布が不均一な領域が増加する傾向が認められた。 応力解析の結果からは、疲労破壊規準を求めるにはスカーフ継手が応力分布の均一性の面からより適していると考えられるが、スカーフ角が15°以下のスカーフ継手の高精度な機械加工ならびに製作は因難である。そこで、せん断応力が支配的な場合、(1)の突合せ接着継手の軸芯を高精度にずらす方法を採用し、引張応力が支配的な場合には(2)のスカーフ継手を用いる方法を採用することを決定した。 現在、(1)(2)の試験片ならびに治具の設計・製作を完了し、スカーフ継手の疲労試験を実施中である。また、(1)(2)の疲労試験より得られた疲労破壊則の適応性を調べるための重ね合せ接着継手の接着層における応力分布の有限要素法による解析もあわせて行っている。
|