試料片はAl/SiC傾斜機能材料厚肉円筒(リング)であり、アルキャン社のジュラルカンF3D20(Al合金/20vo1%SiC)インゴットを用い、自製の遠心鋳造システムで重力倍数G=40〜130を負荷し作製した。作製した厚肉リングは旋盤で表面を超硬バイトで研削し、外径90mm、幅30mm、肉厚8〜10mmの試験片に整形した。この祭、SiC粉末を多量含有しているため研削は極めた困難であり、また発熱も大きい。整形後、510゚Cx2hの均質化処理を行ない冷却時の温度勾配による変形が生じないようにそのまま1昼夜かけて炉内で除冷したものを試験片とした。残留応力測定は、整形時の研削の困難さの経験からザックス法ではなく切裂法を採用した。切断前に多点のひずみゲージを試験片に貼り、インストロン型引張圧縮万能試験機を用いてリング圧縮試験を圧縮荷重200Nから200N毎に1KNまで行なった。ここでの変形は弾性変形であり、-300〜450μストレインという範囲の円周ひずみ測定値を得た。ひずみ絶対値の大小は重力倍数との関係があり、SiC組成傾斜分布の影響が認められる。その後、厚肉リング試験片に再度多点のひずみゲージを貼り、精密低速切断機で切裂法に従って切断し、生じるひずみを測定した。この際、リングを小型の万力で固定し、試験片温度が上昇しないように切削液にて冷却しつつできるだけ低速で行なった。さらに、切断後の時間変化も6時間にわたって調べたが、変化は認められず、-750〜500μストレインという範囲のリング外面で引張、内面で圧縮の円周ひずみ測定値を得た。これは、組成傾斜に起因する残留応力により曲げモーメントが生じたためと考えられ、この点に着目した残留応力分布の解析を、SiC組成傾斜分布測定とともに進めている。
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