材料には、平均結晶粒径が1μm(OD材と呼ぶ)および19μm(5Dと呼ぶ)なる、粒径の違う2種類のアルミナを研究対象に選んだ。試験片としては、微少なき裂を模擬して、直径約0.1mm、深さ約0.04mmの微少な穴を有する試験片を製作し、これらの疲労試験を実施すると共に、き裂の発生および進展について調べた。その結果明らかになったことは: (1)OD材の方が5D材よりも強い。これは、、340μmや200μmに於ける以前の結果と軌をいつにするものである。 (2)疲労試験では、微小穴以外から疲労破壊したものがOD材で50%、5D材で25%存在した。このように小さな応力集中部(微小穴)の切欠効果は小さく、微視組織の再弱部である平滑部の強度と余り差が無いことが判る。 (3)き裂が、微小穴から少し離れた位置から生じた試験片があった。この場合、き裂発生の極初期からの観察が出来た。その結果、寿命の75%時点ではき裂は見えなかった。83%時点でき裂長さは約10μmとなり、92%時点で25μmとなった。平滑材のき裂発生は、寿命のずっと後で生じることが判った。 (4)上で観察したき裂の場合、き裂進展速度は、き裂が10μmの場合は、以前に求めたCT試験片、340μmき裂や200μmき裂よりはるかに速い。き裂が25μmの時はCT試験片よりは遅く、340μmき裂や200μmき裂に近い。 (5)破面は、繰返し荷重下でゆっくりとき裂進展した部分では、ほとんどが粒界破壊を示し、瞬時破断部では粒内破壊の割合が増加した。これは、大きいき裂の結果と同様であった。
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