研究概要 |
繊維強化複合材料の材料特性の変動性と直交異方性の2つの性質は,従来設計がなされてきた確定論の立場のみならず,場合によっては確率場での取扱いがふさわしい時もある.こうした観点から,これら2つの従来欠点とされていた特性をむしろ長所として生かしてゆこうとする材料設計の姿勢を確率材料設計法と名づけ,慣用材料に対する従来の設計法では把握できなかった分析や評価を行なおうと試みた. かかる目的により,繊維強化複合材料積層板の確率材料設計法を体系化するため,平成4年度においては,基礎的研究を進めてきた.その結果,従来の信頼性解析法のための定式化である,材料強度パラメータ,積層パラメータ,荷重パラメータ,寸法パラメータ,形状パラメータ等の諸量を確率変数として扱いうる方法を確立した.また,これらの多くのパラメータの不確定性を考慮して,複合材の巨視的破損則に立脚した破損確率評価法を検討し,一方向材に関しては,ほぼ満足のいく結果を得ることができた.さらに,これらの成果を複合材料の材料設計に応用する目的で,繊維配向角と面内多軸荷重の任意の組み合せに対して,破損確率の評価を可能とする設計ノモグラフの創生を試み,確率破損包絡線という,面内ひずみ空間において積層板の確率制約のもとでの許容領域を表す新しい設計支援グラフを完成した.さらに,多数のパラメータの介在する複合材料では,品質管理の立場からも,設計効率向上の立場からも重要なファクターの抽出が必要であり,信頼性の立場からこれら多くのパラメータサーベイを行なう方法論を定式化した.提案したパラメータ・センシティビティ・スタディは,解析的に信頼性理論と結びついた合理的な方法であるので,一回の信頼性解析で得られる大きな情報活用の場となった.
|