研究概要 |
極限状態として摩擦素材の降伏応力以上の接触面圧条件を考える。この条件は主に、塑性加工等においてみられる。本研究では、摩擦対の一方を工具材に対応したものとし、もう一方の摩擦対は被加工材に対応するものとし、各種亜鉛めっき鋼板を用い、しごき形摩擦試験機を用いて検討した。めっき層の変形特性あるいは摩擦特性が変形しながら摩擦を行う場合の摩擦挙動に著しく影響を及ぼす。本研究により、次の様な結論が得られた。 (1)GA,GAE材はしごき加工中にメッキ層の破壊を生じる。破壊により生じた亀裂が潤滑剤を流出させ、油膜の維持が困難なため、GA,GAE材の摩擦係数はメッキ層本来の摩擦係数が支配的である。そのため、しごき率の変化・潤滑剤粘度の増加に対しても摩擦係数の変化は小さい。 (2)EL材はしごき加工中に、メッキ層の破壊を生じるが破壊の形態はGA,GAE材と異なる。また破壊により生じたわれの容積は比較的小さいため各加工条件による潤滑剤の影響は、GA,GAE材より受け易い。ただし、メッキ層自身の摩擦係数が低いため加工条件の変化に対する変動としてはGA,GAE材と同様に小さい。 (3)EG材はメッキ層が母体の変形に追随し易いため、しごき加工中にメッキ層の破壊を生じない。破壊層を生じないために、しごき加工中の摩擦係数は潤滑剤の摩擦係数が支配的となる。メッキ層自身の摩擦係数はGA,GAE,EL材より高いものの、潤滑剤の影響はGA,GAE,EL材より受け易いため潤滑剤粘度の増加により摩擦係数値は逆転する (4)硫黄系添加剤は、表面にZnを持つものに対して、リン系添加剤はFeを持つものに対して、より高い摩擦低減効果を示す。但し、摩擦低減効果は、リン系添加剤の方が高い。
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