研究概要 |
本研究では、共同研究者らが開発した金属フラックス法によって、ホウ素正20面体を骨格とする高級ホウ化物Al_3C_2B_<48>結晶を合成し、その結晶の応用として焼結工具、研削・研磨砥粒の開発を目指した。平成4年度は、金属フラックス法によって、Al_3C_2B_<48>結晶を基礎にケイ素添加したAl_3C_2B_<48>型結晶の合成法を確立し、その時の結晶学データや結晶の硬さ試験を行い、結晶の基礎データを得ることを主目的で行った。金属アルミニウム融液法を用いたAl_3C_2B_<48>結晶とケイ素添加したAl_2C_2B_<48>型結晶の合成は、原料を金属アルミニウム(純度:99.99%)と粉末ホウ素(純度:95%)、および粉末炭素(グラフアイト、純度:98%)、ケイ素(純度:99.999%)を一定の配合原子比(B/Al=0.10、C/B=0.056、Si/B=0〜0.07)で乾式混合し、Ar雰囲気の縦型電気炉中で所定の合成条件(加熱速度は290℃/h、加熱温度(1450℃)で10時間保持、冷却速度20℃/h)下で合成した。得られた結晶は、鋭角で多面体状を有し、大きさは最大で2.5mm×2.5mm×2.5mm程度で得られた。この時の結晶の実測密度は、dm=2.61g/cm^3前後であり、格子定数は、a=12.291(2)A^^○,b=12.302(1)A^^○,c=12.621(1)A^^○であることがわかった。 また、Al_3C_2B_<48>結晶の硬さは、2500kgf/mm^2からケイ素の添加量によって最大で3600kgf/mm^2で得られた。この硬度値は、現在使用されている超硬合金やサーメット、セラミックなどの焼結体が1800〜2000kgf/mm^2前後であることから、高硬度の結晶が得られたことがわかった。なお、空気中での耐酸化性では、酸化の重量増加量が最も多かったAl_3C_2B_<48>型結晶は、0.122mg/mm^2であった。また、超硬工具の酸化重量増加量が0.27mg/mm^2で、サーメット工具の0.10mg/mm^2と比較して、サーメット工具の耐酸化性と同程度であることもわかった。今年度は、工具材料として具備していなければならない幾つかの条件を満足したケイ素添加したAl_3C_2B_<48>型結晶の最適合成条件を明らかにすることが出来た。
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