工作機械の本体構造には、従来より鋳造構造、鋼板溶接構造などが用いられてきたが、近年接合部の動剛性の改善・軽量化の観点から接着継手を利用した構造の採用が提案されている。しかし、これまで系統的な設計指針はなんら提示されていない。そこで本研究では、特にL字形および箱形構造を対象に接着層厚さや接着結合部の継手形式(印ろう、矩形、溝形、突合せなど)が静・動剛性に与える基本的な特性について検討を行った。 その結果、得られた主な成果は以下のとおりである。 1.印ろうを用いたL字形接着構造 1)接着層厚さが厚い場合でも、印ろうつば部長さを短くすることで曲げ静剛性を向上させることができる。 2)つば部厚さを厚くすることにより、印ろうコーナ部の応力集中を軽減できるが、ある程度の厚さ以上になるとその効果はなくなり、曲げ静剛性値はほぼ一定となる。 3)接着層厚さの変化により、対数減衰率と固有振動数が反比例の関係となり、接着層厚さが厚い印ろう形継手構造の場合には、比較的高い固有振動数と振動が残留する性質を持つ。 2.箱形接着構造 1)印ろう形継手を採用した構造は、他の継手形式と比較して高い静剛性(曲げ、ねじり)が得られる。 2)印ろう形継手構造は、他の構造と比較すると接着面積の影響が現れ対数減衰率は高い値を示し、振幅の割合も小さく動剛性向上に有効な継手形状であることが認められた。 3)接着構造体の総合的な剛性を評価するためには、環境温度を十分に考慮する必要がある。
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