研究概要 |
本年度の研究では以下のことが検討された. 1)極低温真空中での摩擦発熱による温度上昇測定 超伝導マグネットの摩擦発熱機構を検討するため,真空中での温度上昇を求める実験を行った.固定試験片は試験片ホルダー(銅製)の温度と等しいとし,駆動試験片の温度は熱電対を挿入して温度を直接計ることにした.駆動試験片は先端半径8mmの球面状であり,先端から0.4mmと1.4mmの位置に直径約0.3mmの熱電対挿入穴を放電加工であけた.使用した熱電対は線径0.076mmのAu-0.07at%Fe vs クロメルである.試験片を冷却した結果,固定試験片の温度は液体ヘリウム温度に近づくが,駆動試験片は温度が十分に下がらず,温度差としては最終的には約30〜80度あった.この温度では材料の比熱が大きく,かつ熱伝導率が大きくなるため,極低温(液体ヘリウム温度)での摩擦温度上昇は求められなかった.本実験では駆動側試験片の冷却は基本的には接触面の熱伝導で行っているため,冷却速度が十分でなかったと考えられる.荷重を大きくし接触面積を大きくしたりして種々検討したが,うまく冷却できなかった.今後は駆動試験片の冷却方法を根本的に変更する必要があると結論した. 2)Nb_3Sn超伝導素線メッキ被膜の検討 CIC(ケーブルインコンジット)導体に使われるNb_3Snには交流損失を低減するため,Crメッキが施されている.この被膜が摩擦を受け剥離する可能性がある.そこで被膜材質や厚さ,熱処理法を変えた8種類の被膜について,摩擦係数と接触電気抵抗を液体ヘリウム中で求め,最適な被膜を検討した.その結果,熱処理を施したW系アモルファス合金被膜が最適であることを得た.
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