2024Al合金にSiCウィスカを体積含有率で22%混合させたAl基複合材料(FRM)と比較のためベース材料のディスク試験片に、S45C鋼のピン試験片(HV=320)を組合せて、温度と湿度を制御した大気中とアルゴンガス中でピン・ディスク摩耗試験を行い、次の点が明らかになった。 1.2024Alは初期にシビヤ摩耗があらわれ、相対湿度の増加とともに初期摩耗距離は徐々に減少するが、FRM材はいずれの相対湿度でも試験開始直後はマイルド摩耗を生じる。 2.摩耗面と摩耗粉のX線回折、XPSなどの観察から、初期のシビヤ摩耗から定常域のマイルド摩耗への遷移は、摩耗面と摩耗粉が酸化されるためで、これには環境中の水分の方が酸素よりも影響する。 3.マイルド摩耗率は、2024Alでは相対湿度にともなって増加し、環境中の水分量が摩耗に著しく影響している。FRMの摩耗率は相対湿度70%以上でわずかに増加するが、相対湿度による影響は2024Alと比較すると非常に小さい。 4.アルゴンガス中では、母材、FRM材ともに摩耗率は大気中より小さくなる。 5.摩耗係数は、大気中、アルゴンガス中とも相対湿度によらずほぼ一定で、いずれの場合もFRMのほうが大きい。 6.2024Alでは水分の吸着によって摩擦表面の強度が低下し、そのため摩耗粉径が大きくなって摩耗率は大きくなる。FRMはマトリックスは水分の作用によって破壊しやすくなるが、ウイスカの拘束によって大きな摩耗粉に成長しないで細かい摩耗粉が数多く脱落するようになるため、定常域での摩耗率にマトリックス材料の2024Alのような大きな違いを生じない。 以上の結果、環境中の水分によってAl合金の摩耗は急増するが、Al基複合材料への影響は小さいことが明らかになった。
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