内歯車を動力伝達用または角度伝達用の変速機に利用すれば、機械の小形化及び動力伝達効率の向上に寄与し、また省エネルギーとコストの低減が達成できる。しかし、内歯車の精度が問題となる。本研究の目的は、内歯車の高精度化を達成するとともに、その動力伝達特性を明らかにして、内歯車変速機が有効に利用できるようにすることである。内歯車の高精度化のための研削は、外歯車の場合と異なり、創成研削ができないので、特別の研削盤が必要となる。筆者らは、外歯車を精密に研削できるコンピュータ数値制御(CNC)歯車創成研削盤を実習工場で試作することに成功していたので、この研削盤を改造して、内歯車が研削できるようにすることにした。改造方法には二通りの案があったが、高精度のはすば内歯車も容易に研削できるようにするために、割出部を横形に改造した。割出部は従来の機構を改良して、サーボモータから2個のウォームギヤを介して、ダブル駆動として、高精度化とバックラッシュの悪影響を除去することに成功した。内歯車を使った遊星歯車変速機および内転ハイブリッド形変速機を設計製作して、動力伝達効率、振動と駆音などの運転性能を調べた。内歯車変速機は精度が同じ外歯車変速機よりも動力伝達効率が高く、また振動と騒音も小さい。内歯車変速機の動力伝達効率の実験値を解析するために、理論計算式を誘導した。この計算式の誘導方法は複雑な複合遊星内歯車機構にも適用できる。また、内歯車変速機の振動と騒音を解析するときの有効な手段として、変速機を構成する各歯車のピッチ誤差、偏心誤差がどのように縮小(または拡大)されて出力軸に表れるかを計算した。この計算の結果、内歯車変速機の構造がかなり変わっても、内歯車の誤差はほとんど縮小されないことが分かり、内歯車の高精度化の意義の大きいことが理論的にも証明された。本研究の成果の一部は国際会議EUROTRIB-93で発表予定である。
|