本研究では、すでに設計製作が完了していた5軸コンピュータ数値制御歯車成形研削盤の研削ヘッド部を改造して内歯車が研削できるようにした。成形研削砥石は研削盤上で単石ダイアモンドドレッサーで自動的に成形した。研削砥石には、アランダム粒のビトリファイド結合のものを用いた。研削した内歯車はモジュール4、歯数60枚、歯幅50mm、標準歯丈の平内歯車である。この内歯車を用いた遊星歯車変速機の太陽歯車(外歯車)、および遊星歯車も試作した歯車研削盤で仕上げた。この内歯車変速機は、減速比が大きくないので、動力伝達効率は非常によい(98%以上)。この変速機の他に、減速比を大きくするため、2種類の複合形差動遊星歯車変速機を設計製作して負荷運転を行った。更に、自動車の自動変速機に使用されている内歯車形遊星歯車変速機の一部の歯車を研削して、歯車研削の効果を調べた。上記の歯車のみを用いた変速機は効率は高いが、歯車を研削しても騒音を十分満足できる程度に低くすることができなかった。歯車の歯のかみ合いにおける、衝撃的な荷重の負荷と除荷は、歯がある限り歯車の精度を高くしても避けることができない。本研究では、将来の有望な高性能内歯車変速機として、内歯車形遊星変速機の歯車の一部をローラに置き換えたハイブリット形変速機も試作して負荷運転を行った。このハイブリッド形変速機では、ローラ部における油膜を介する動力伝達では、衝撃的な荷重の伝達が無くなるとともに、一部に残存する歯車の衝撃的かみあいを緩和して騒音を著しく低くできることが分かった。ただし、変速機の容積を一定としたときに、動力伝達能力と効率が低くなるので、歯車のみを用いる変速機の騒音を低くする研究を更に地道に行う必要がある。特に、歯面の研削のみでなく、遊星歯車の歯厚の厳密な管理、遊星歯車と内歯車の位相差かみ合わせ、歯形と歯筋の最適修整量などの研究も必要である。
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