本年度は滑りを伴う転がり運動の場合について、すなわち一般の任意の周速における油膜形成の実験的研究、ならびに理論的研究を行った。鋼球とサファイア板の間に形成される弾性流体潤滑油膜が光干渉法によって測定された。本研究においては、種々の潤滑油の中からパラフィン系の基油、合成潤滑油およびトラクション油を選択して実験を行った。そして各々の潤滑油の弾性流体潤滑油膜の形成に及ぼす滑り速度の影響について研究を行った。その結果、一般的には滑り運動のある場合は潤滑油膜の減少を導くことになるのである。そして、これら3種類の潤滑油全てに言えることであるが、理論値、実験値ともに、滑りが生じると出口域において通常発生するくびれの幅が大きくなり、最小油膜厚さが減少する。また滑り率の増加は油膜厚さの減少を招くものであり、潤滑油の特性によって、油膜厚さの減少に及ぼす滑り率の影響の大、小が異なることが実験的に明らかにされた。とくに同一粘度の場合は、最小油膜厚さが滑りの影響を最も大きく受けるのはトラクション油の場合であり、最も小さいのは合成潤滑油(ここではポリオールエステルを使用した)の場合であった。 またアイリング粘性と、滑りのある場合に問題になるせん断発熱を考慮した二次元弾性流体潤滑の理論計算式を導き、この理論式を使用して実験条件に対して計算を行った。その結果は、実験結果を十分説明することが出来る。
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