研究概要 |
本年度までに,ArFエキシマレーザー(波長193nm)と超高感度CCDカメラの組み合わせにより,酸素のPLIFによる常温以下の希薄気体流の可視化が可能であることを明らかにした. ArFエキシマレーザーは酸素のSchumann-Runge吸収線(X→B)に対応し,このレーザー光により220nm〜400nmの範囲のけい光を発する.ただし,常温以下では,ArFエキシマレーザー光を酸素が吸収しにくく非常に微弱なけい光強度しか得られず,常温以下では酸素のけい光を可視化に利用するには困難であるとされてきた.そのため,実験装置やレーザー入射窓から散乱されるレーザー光の除去,レーザー光路をアルゴンで満たしレーザー光の減衰を防止,イメージインテンシファイアのゲインを低く抑えて雑音を低減化,CCDカメラの露光時間を長くする等の工夫を行った.本研究では酸素の超音速自由噴流にこの方法を適用し,酸素のけい光による常温以下の超音速自由噴流の構造,特に衝撃波系の可視化を可能にし,本可視化手法の有効性を明らかにした.また,超音速自由噴流中心軸上のけい光強度分布から酸素が発するけい光が衝突失活の影響を受けず,けい光寿命が前期解離失活に律速されることも明らかにした.この性質は,従来のレーザー誘起けい光による物理計測において問題であった衝突失活の見積が不必要であることを意味し,酸素のレーザー誘起けい光による物理量の高精度な非接触・多点同時計測の可能性が示された.本研究では,物理量計測の一例として酸素のけい光強度を用いた密度計測を行い,けい光強度の密度依存性が理論と実験で一致することを明らかにした.
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