本研究の前段階で開発した温度成層形成装置を用いることにより、初めて風洞実験による内部重力波の自然発生・発達を可能とするような強安定成層流を実現した。本研究では、その自然発生した内部重力波の発生機構や制御の可能性に関する研究を行い、以下の結果を得た。 1.熱線温度流速計の回路の改良やプリント基板化により計測システム全体の安定性、周波数応答範囲の拡大、低雑音化などをはかり、さらに信頼性の高い温度・速度変動の瞬間波形を得ることができた。その結果、局所的に大きな温度・速度匂配を有する成層流中の温度・速度場の特性を定量的に精度良く計測することができるようになった。 2.ステップ状の温度分布を有する強安定成層流の混合層内に内部重力波を自然発生・発達させ、波動の発達過程やそれが熱・運動量輸送機構に及ぼす影響について調べた。その結果、(1)内部重力波の発生は混合層内に存在する極めて小さな撹乱によって制御されている。(2)内部重力波は下流に向かって発達する。(3)内部重力波は混合層の外緑に近づくにつれて周期性が保たれたまま、振幅は減衰する。(4)最下流での局所リチャードソン数Riは、混合層の外緑では大きくなり、Ri>1を越えるようになることが、実験的に証明された。このことは理論解析で予測された内部重力波の混合層内への吸収を示している。(5)内部重力波が存在する場合、レイノルズ応力および乱流熱流束の分布は、速度・温度匂配の分布形状と相似形にはならず、混合層の外緑近傍でピーク値を有する2つ山の分布形状になった。これは乱流輪送より内部重力波の伝播に伴う輪送の方が支配的となるためであり、波動が存在する場合には通常の匂配輸送モデルによってのみ熱・運動量輸送を評価することが危険であることを意味している。(6)乱流輸送方程式の生成項を求め、内部重力波が存在する場合の乱れの生成には温度・速度匂配の寄与が小さい。
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