電磁流体力学(MHD)発電は、従来の蒸気タービン方式の火力発電と比較して高い発電効率が期待できるため、世界各国で積極的に開発が進められているが、現在、MHD発電法で最も大きな問題とされているのは、発電時に発生する出力電圧・電流の揺らぎである。発電出力の揺らぎに直接関係するのはチャネル内プラズマの電子密度と導電率の揺らぎであるが、電子密度と導電率の高精度測定法として遠赤外レーザーを用いた方法が開発されてきた。本研究では、遠赤外レーザー計測法で電子密度と導電率が同時に計測できる光学系を設計した。本研究において、現在までに得られた結果を以下に述べる。 1.本研究では当初、ファラデー回転法による計測系の確立を目指したが、研究遂行中に全く新しい干渉測定法に関する着想を得た。このため、当初の目的を若干変更し、この新型干渉計の設計・製作と実証試験を行うこととした。この干渉計は従来のマイケルソン干渉計の光路にもう一本の干渉ビームパスを加えたもので、二本の干渉信号の位相を予め45°ずらせておくことにより、電子密度が大きく変動して干渉信号の位相が360°以上変化しても正確にその変化量を追跡できる。本干渉計を製作するとともに、ここで問題となる多重干渉効果を考慮した新たな干渉理論を構築し、その結果に基づいた特殊なデータ解析ソフトウェアを製作した。 2.以上の準備の下に灯油燃料チャネルで得られた燃料ガスプラズマを対象とした実験的研究を行った。とくに、MHDプラズマでは初めてレーザービーム検出器にショットキバリアダイオードを使用し、これまでに例のない高時間分解能測定を実現した。その結果、本研究で得られた二重干渉計により、燃焼ガスプラズマ中の電子密度と導電率の変動が高精度で測定可能であることを実証できた。
|