血管内に気泡が形成し、血管内腔が閉塞されるガス塞栓は、開心術、血管造影時等における合併症として発症するほか、潜水病等の成因ともなる。また、体外衝撃波結石破砕術時における副作用の要因として、衝撃波による血液中のキャビテーション発生が指摘されている。さらに、職業病の一つである振動性疾患(白ろう病等)についても、その発症機序には加振される血液中の生成気泡が関与する説が有力視されるなど、血液中における気泡形成の問題は、医工学上極めて重要な研究課題となっている。本研究では、液中における微細気泡の発生条件を検討するため、円板回転・減圧型気泡発生装置を試作し、気泡発生に及ぼす円板回転速度および減圧度の影響について実験を行った。また、キャビテイの様相の観察、気液二相流計測システムを用いたボイド率の計測を行い、次の結果を得た。 1.高回転速度では、低減圧域で気泡が発生する。減圧度の増加と共に、低速度で気泡が生成しうる。例えば、減圧度を50mmHgとした場合、気泡発生時の速度は2.8m/sとなる。 2.減圧度が大きくなるに従ってボイド率が増加する。山羊新鮮血(ヘマトクリット25%)中のボイド率は、減圧度80mmHg、速度1m/sで約1%である。 3.低減圧度では、発生する気泡サイズは小さく、その成長も緩慢である。しかし、減圧度が300〜500mmHgでは直径1〜2.5mm程度の気泡が形成され、気泡間の合体も促進される。 気泡力学に基づく血液中の気泡挙動に関する理論的研究を行うことにより、次の結果を得た。気泡の振動は、衝撃的な圧力の発生を伴い、その圧力の大きさは生体損傷の要因となり得る。また、発生圧力は、ヘマトクリットが大きいほど低下する。
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