研究概要 |
本研究で取り上げた実験装置は助走管,羽根車及び遠心羽根なしディフューザを膜した2枚の平行円盤(出入口半径比2.50,ディフューザ幅と入口半径の比0.13)から構成される.羽根車の回転によって助走管から吸引された空気はディフューザを通過後直接大気に放出される.今年度は特に旋回失速初生流量付近の流れ場に着目して主に圧力場と速度場の計測を行った.以下に実施計画に沿って研究成果を報告する. 1.旋回失速発生時の流れ場の基本特性 ディフューザ円周上の異なる3点における圧力の同時測定から流量係数0.12付近で約10Hzの卓越した周波数を持つ強い圧力変動がディフューザ内を羽根車の回転と同じ方向に伝播することが確認された.また、圧力変動と同期させてサンプルした熱線風速計による速度変動の測定結果から、壁面静圧上昇と失速領域の通過の対応が確認された。 2.発生過程の流れの解明 旋回失速発生直前に約14.5Hzの卓越周波数をもつ弱い圧力変動が発生する。速度場の測定の結果、これはディフューザシュラウド壁面近傍の局所的な逆流領域の発生によるもので、旋回失速と類似した性格をもつことからがわかった。 3.レーザー流速計による計測システムの確立,予備実験 現有のレーザー流速計に長焦点レンズと逆流測定用周波数シフト装置を新たに装着して予備実験を行ない、動作の確認を行なった。圧力変動との同期サンプル法と光学系の設定、光散乱粒子の添加に関して検討を要する。 4.傾斜熱線プローブによる失速時の3次元速度測定 流路幅の制約から測定範囲が限られてしまったため、プローブ挿入方向に検討を加える。 5.数値解析 慣性力が卓越することによる流れの不安定性を捉えるために輸送方程式の対流項の高精度近似が必要であった。計算格子数に制限があるため、bounded schemeの導入を検討中である。
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