研究概要 |
前縁に曲率10mmの円弧を有する平板翼のまわりに,一様流あるいは加速流を与え,レイノルズ数Re=2.65x10^4一定の下に迎え角を変化させ,剥離の性質,剥離泡の構造,剥離領域の流れの性質および翼面圧力と翼面近傍の流れを実験的に検討した.その結果を以下に要約する. (1)剥離の性質は,主流のレイノルズ数,乱れおよび主流を加速する前縁の曲率を一定とすれば,流れの岐点と剥離点との距離に依存し,迎え角を増加させるなどして岐点と剥離点の距離が増大すれば層流剥離から乱流剥離へと変化する. (2)遷移領域で剥離する場合は,剥離泡内の大規模渦中心は剥離泡後半部に存在し,分離流線の主流方向勾配の絶対値は,剥離泡前半部より後半部の方が大きい.一方,乱流剥離の場合の大規模渦中心は,剥離泡前半部に現われ,分離流線の主流方向勾配の絶対値は,剥離泡後半部より前半部の方が大きい. (3)剥離した流れが再付着する機構としては,(1)剪断渦によって主流から剥離剪断層にエネルギが供給され,逆流領域が消滅して再付着する場合と,(2)剥離泡内から主流への連行量と等しい逆流量が,再付着点から剥離泡内に供給されるために必要な逆流領域の大きさとして,剥離泡高さと剥離泡長さが決定される場合とに大別できる.(1)より(2)の場合の方が剥離泡高さおよび剥離泡長さ共に大きい. (4)剥離泡内のレイノルズ応力は,遷移領域で剥離した場合には,大規模渦中心より若干下流側で最大になるが,乱流剥離の場合では大規模渦中心より少し上流側,しかも逆流領域で最大になる. (5)層流剥離,遷移領域での剥離の場合,再付着点は剥離泡内の負圧台地直後の圧力回復過程に生じる.一方,乱流剥離の場合,再付着点は圧力回復がほぼ終了した位置に見られる. (6)翼面圧力変動の最大値は,遷移領域での剥離の場合には,ほぼ再付着点付近に生じ,乱流剥離の場合には再付着点より上流側に生ずる.
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