剥離した流れが再付着する物体あるいは流路内の熱伝達特性の解明は種々の形式の熱交換器の性能等と密接な関連を有し、熱エネルギーの有効利用・省エネルギーの観点から緊急を要するきわめて重要な課題である。これまで、最も基本的な流れ形状の一つと考えられる鈍い前縁を有する平板および鈍い前縁を有する主流に平行に置かれた軸対称円柱を取り上げ、熱伝達特性・流れおよび乱れ特性を解明してきたが、逆流と渦放出に伴う強い非定常性のために、乱流熱輸送機構の詳細はいまだ不明であるといっても過言ではない。また、このような複雑な流れの精度の高い測定方法の確立も強く要請されている。 本研究は、鈍い前縁を有する平板まわりの二次元流れを取り上げ、剥離域内部から再付着領域、さらに再付着後の境界層発達領域における速度変動と温度変動の信頼度の高い高精度の測定方法を確立するとともに、相関分析・スペクトル分析等を通して、剥離と再付着を伴う複雑な乱流系における熱輸送機構を解明しようとするものである。平成5年度において得られた結果の主たるものは次のようである。 速度変動と温度変動のゆがみ度と偏平度を算出することにより、流れ場の大規渦構造が特に主流方向速度変動にゆがみをもたらすこと、温度変動はそれに強く依存する。ミニチュアXプローブに冷線を組み合せたトリプルワイヤプローブを試作し、2方向速度変動と温度変動の同時測定を行うことにより、主流およびそれに垂直方向の乱流熱流束を算出し、その特性を明らかにすることができた。
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