EHD(電気流体力学)効果により液体単相流において、伝熱面近傍の流体を攪拌させ、対流伝熱を促進させることはこれまでの研究で確認されているが、そのメカニズムはわかっていない。そこで、液体中に平等電界を印加した時に生ずる乱れをEHD乱流と名付け、この特性を解明すると共に伝熱促進効果とどのように結びついているかを調べる実験を行った。すなわち、電場による攪拌においては流体中のイオンが乱れの原動力となっており、このイオンと流体との摩擦抵抗により電場と流れ場は互いに影響を与えている。この乱れの状況を明らかにするため10cm四方の平等電極2枚(間隔1cm)の間に代替フロンR-123を充たした状態で高電圧を印加し、この時の電極中央部における流速分布をレーザードプラー流速計で、また、高電圧印加後の電流の変動成分をパワースペクトラムの形で測定した。電場をかけた時の電極間空間を観測すると、流体内に存在した微粒子が電極間を往復しているのがみられた。印加電圧の低い時は高電圧側から勢いよく飛び出すものの、戻る際にはその勢いは若干衰えていた。印加電圧が5KV以上になると、戻る時の勢いも増しつつ微粒子の飛び出す地点間隔が数cmから数mmへと密になり、イオンにより生じた流れが次第にそろってくることがわかった。この時の垂直方向の流体の平均速度は30〜40cm/sに達していることも確認できた。また、速度や電流の変動成分のパワースペクトラムを調べると、電場をかけることにより乱れが増大し、周波数にも若干の影響があることがわかった。これらの結果から、電場により乱れは増大するものの、乱れの状況は5〜10KVを境として多少異ってきて、特に10KV以上の高電圧ではイオンの移動が密になるため、比較的そろった流れに遷移することがわかった。
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