本年度は、燃料蒸気濃度及び速度場の計測、処理手法の開発を進めた。 1)蒸気濃度の2次元定量化: 蒸発噴霧中での燃料蒸気濃度の定量計測を検討するために、エキサイプレックス蛍光法による可視化実験を行った。蛍光物質としてはTMPDとナフタレンを、また光源としてはNd:YAGレーザの第3高調波を使用した。その結果、蒸発噴霧中の液相部と気相部をある程度分離して可視化できること、また気相部の蒸気分布を準定量的に把握することが可能であることを確認した。さらに、液相部の存在範囲が比較的大きく、気相部の蒸気濃度分布に大きな影響を及ぼしている可能性が有ること、また液相部の存在範囲は温度等の雰囲気条件よりも、燃料の微粒化状態すなわち噴射条件に影響を受けている可能性が有ること等を明らかにした。なお、蒸気濃度分布の不均一性を解析する画像処理プログラムの作成を並行して進め、ほぼ完成した。 2)2次元画像処理流速計の開発: 速度場の計測のために、PIV法に基づく2次元画像処理流速計の開発を進めた。本研究で開発したシステムの独自性は、特に画像処理の方法に工夫を凝らすことにより、検査領域内の平均流速だけでなく個別のトレーサの速度ベクトルも求められる点に有る。疑似的な剛体渦中の流れ場の計測実験により、本手法の計測結果の健全性と共に、比較的大きな観察領域を確保しつつ瞬時の速度ベクトル情報を高密度に取得できることを確認した。現在までの結果では、25mm×13mmの領域内で約1万ベクトルというデータ数であるが、トレーサ粒子の管理を適正にすれば、数倍のデータ数が得られるものと推定され、乱れ強さ、積分スケール、渦度、乱れの生成・散逸等の乱流の空間的統計量が算出出来るものと考えている。 来年度は以上の計測手法をさらに改良すると共に、両手法を併用した同時計測により、蒸発噴霧と流れ場の相互作用について検討する。
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