本研究では、生体の冷凍保存に関連して半透膜で仕切られたセル列内の水溶液の凝固現象に関し実験的研究を行った。 実験では、厚さ25μmのセロハン膜、厚さ40.6μmと厚さ73.7μmの人工透析膜の合計3種類の半透膜を使用し、NaCl水溶液の初期濃度(8%と2%)、冷却温度(冷却用ブラインの設定温度を-50℃と-10℃)をパラメータに片側冷却条件で凝固実験を行った。 その結果、以下のことが明らかとなった。 1.厚さ10mm程度のセルでは、密度差に伴う流動を抑えることはできず、凝固面での冷却あるいは半透膜を過る物質移動に伴い、温度については上部ほど高く、濃度については下部ほど高い分布となる。 2.NaCl水溶液の共融点より低い温度で冷却した場合には、溶質は固相中に取り込まれるため、液相内の濃度と凝固速度は半透膜の透過率にほとんど依存しない。 3.NaCl水溶液の共融点より高い温度で冷却した場合には、 (1)初期濃度の高い場合には、溶質の排出効果が顕著に現れ、セル内の下部において液相濃度が高く凝固しない領域が生じる。この場合には、液相濃度と凝固の進行は半透膜の透過率に大きく依存する。 (2)初期濃度の低い場合には、固相内(固液共存領域)に多小の溶質の取り込みがあるために、見かけ上溶液はすべて凝固し、凝固速度は半透膜の透過率にほとんど依存しない。
|