本研究は、箱型フィンを水平加熱平板上に設けることで、加熱平板からの自然対流熱伝達が促進可能なことを実証しようとしたものである。そのために、まず平滑な上向き加熱平板上の自然対流の伝熱・流動を明らかにした。水を試験流体として、板幅基準の修正レイリー数が2X10^3〜2X10^<15>の広い範囲について、可視化および局所熱伝達率の測定を行った。その結果、伝熱面上には板の端から中央に向かって順に、(a)層流境界層域、(b)はく離域、(c)乱流域および(d)衝突域の4つの領域が生じることを明らかにした。このうち、(b)と(d)の領域の存在は本研究によって初めて確認されたものである。一方、熱伝達率の測定から、板端からの距離xを代表長さとする局所ヌッセルト数の局所修正レイリー数に対する勾配は、上述の各領域において異なることを示した。 つぎに、低熱伝導率素材からなる箱型の仕切りを上述の伝熱面上に設置した場合について熱伝達率の測定を行なった。その結果、伝熱面中央付近における仕切り内部の熱伝達率は、仕切りの大きさおよび高さを適当に選べば、平滑面に比し、局所熱伝達率で最大60%程度、平均熱伝達率で20〜30%程度向上することを見いだした。つぎに、この仕切りを高熱伝導率素材で製作し、フィンとしての機能を持たせた場合について伝熱性能試験を行った。その結果、箱型フィンの大きさが20mm角で、高さが10mmの場合、平滑面に比し最大3倍程度熱伝達率が向上することが解った。また、高さ3mmのフィンでも約2倍という伝熱促進率が得られた。この値はフィンによる表面積の拡大率を上回る。以上の結果は、本研究で提案した箱型フィンが自然対流の伝熱促進上極めて効果的であることを示している。なお、これらの結果の詳細については既に3編の論文として公表し、箱型フィンの実験結果についても、近く論文として発表する予定である。
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