ディーゼルエンジンの構造において燃焼衝撃と強い関連を持つと考えられる加振源としては、(1)燃焼室内の急激な圧力上昇による燃焼室壁の直接加振をはじめ、(2)軸受部や歯車の打撃、(3)ピストンスラップ、等の二次的な衝撃の発生があり、これらによって誘起される振動が外壁面を振動させ騒音が放射される。この主な三つの衝撃応答とエンジン騒音との多次元相関解析を行ない、それぞれのエンジン騒音に対するコヒーレンスを明らかにするとともに、燃焼衝撃により誘起される機械騒音の発生について量的な解析を試みた。この際、残差スペクトル手法等を導入し、エンジン騒音の中・低周波数域の成分は(1)の寄与が大きいのに対し、高周波数域の成分に対しては(2)(3)が支配的であること等を明らかにした。 さらにこの手法を小形ガソリンエンジンの加速騒音に適用し、運転時における各衝撃によって発生する騒音をそれぞれ分離するとともに、加速騒音の主要因がピストンスラップであることを明らかにできた。 次に、駆動系の各軸受部に介在する潤滑油膜が、燃焼衝撃音にどの程度の影響を及ぼしているかを明らかにした。この実験においては潤滑油の油温、供給圧を制御し、軸受け油圧、軸変位、各部振動および放射騒音について調査した。その結果、潤滑油膜の形成は、騒音レベルとしてはオーバオール値で2dB(特定の周波数帯域においては最大6dB)程度の寄与があることを明らかにできた。 また、エンジン構造における衝撃応答の伝搬状況を明らかにする手法として、3チャンネル振動インテンシティ法を用いて、単一爆発加振実験および発火運転実験において調査した。その結果、燃焼衝撃が特に高周波数帯域において、駆動系を経てクランクケースやシリンダブロックに伝達されていることを示せた。
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