本年度購入した高温ガスクロマトグラフならびに瞬間加熱方式の熱分解装置(パイロプルーブ)を用い、燃料の熱分解、重縮合過程に及ぼす加熱時間の影響を調べるための流路を試作し、予備実験を行った。その結果、市販の状態では本実験のように液体燃料を加熱する場合、その全量を加熱ヒーター上に固定して加熱し得ないことが明らかとなった。そこで、試料の導入方法、ならびにインターフェースの加熱方法について検討を行い、新たに試料の全量を瞬間加熱可能な装置を試作した。 また、これと平行して従来の加熱炉を用い、熱分解雰囲気を酸素・窒素混合雰囲気、あるいは酸化、部分酸化成分を含んだ雰囲気に変更可能な流路に組替えると共に、分解成分と酸化成分の同時分析が可能な流路を試作して、含酸素燃料、特にアルコール系燃料の熱分解過程について実験を行った。実験の結果、アルコール系燃料は、比較的低い温度から部分酸化によるアルデヒドが生成された後、中間オレフィン成分、低沸点成分が生成され、これらを経由して環状成分が生成されるが、これらの環状成分は高温度になると減少して行き、パラフィン系燃料のように多環化する傾向は認められないことが分かった。 アルコール系燃料と同じ炭素数、ならびに炭素結合をもつ炭化水素を酸素、窒素混合雰囲気中で加熱した結果、燃料分子中の酸素と加熱雰囲気中の酸素では、熱分解におよぼす影響は明らかに異なっており、熱分解には分子の結合状態が密接に関係していることが分かった。なお、加熱雰囲気中に酸素が存在すると、低温度から分解が開始し、酸化成分であるCO、CO2が生成されることなどが明らかとなった。なお、酸素濃度が可燃限界以下であるにもかかわらず、酸化成分が生成されるのは、熱分解過程で生成される可燃過濃限界の高いアセチレンが酸化されることによるものであることを明らかにした。
|