本研究では、電算機システムなどの高度に発達した情報機器・設備、エレクトロニックスに関連する付加価値の高い工業設備あるいは美術工芸品などの社会資産を地震による転倒から守るためのシステムとして、回転慣性子を付与した新たな転倒防止台を開発することを目的に、以下の事柄を検討した。 1.摩擦抵抗が小さいボールベアリングで支持され、2次元平面上を円滑に運動し、地震後に中立位置に復帰するように弱いばねとさらに回転慣性子を付与した転倒防止システムの運動方程式を導出するために、台の復原力特性を運動学に基づき解析的に求めた。その結果と静的実験結果を比較することにより解析結果の妥当性を明かにした。 2.試作した回転慣性子を付与した防振システムを用い、正弦波加振実験を実施して台の基本特性を調べた。その結果、回転慣性子による、(1)固有周期の長周期化効果、(2)入力地震動の損失効果、(3)入力の大きさに伴った応答倍率の低減効果を明かにした。 3.上記の転倒防止システムの運動方程式の定式化を行い、それを基に入力地震波として白色雑音、長周期成分を有する人工地震波、実地震波を用いた応答解析を行った。この結果は試作した回転慣性子を付与した防振システムを用いた実験結果とよく一致することがわかり、系全体のモデル化の妥当性を明かにした。 4.調和バランス法により、台の定常応答解を基本調波成分と三次の高調波成分の和で表した解析を行って、台の加速度応答に及ぼす三次の高調波成分の影響を調べた。 平成5年度は、台の加速度応答のスパイクを低減するために、台の最適設計を検討する予定である。
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