研究概要 |
接触回転系におけるロール外周部には,接触部を介した強い連成に起因してロール周上に変形が徐々に蓄積し,その成長過程を経て特有の周期的パターンが形成されるという,いわゆる,ロールの多角形化現象が発生する。本年度は,繊維機械のワインダー系に生じる弾性糸の周期的パターン形成に関する実験と解析を行い,一方,タイヤの偏摩耗に関する調査を行った。結果は以下のようにまとめられる。 1.繊維機械のワインダー系に発生する弾性糸の3角形化現象をドライブロールおよびボビンホルダーをおのおの1軸1剛体系とし,8個の弾性糸糸玉を介した線形時間遅れ要素を有する連成系として解析した。弾性糸を粘弾性体と考え,その振動特性と変形回復特性をゴムの実験から推定し,計算結果を示した。また,実験結果を計算結果上にプロットして解析結果の妥当性を確認した。実際の機械では3角形の変形が生じるが,2角形,4角形などの発生可能性をも示唆した。 また,ドライブロール,ボビンホルダーの軸受部の剛性や減衰のパターン形成に対する影響を解析し,パターン形成の抑制のための最も効果的な対策を明らかにした。 2.長時間定速長距離走行が原因で最近特にトラック,乗用車タイヤに発生する偏摩耗現象を古タイヤ業者で調査した。その結果は,タイヤが長時間かけて周に沿って多角形化現象を生じるメカニズムには大別して2つあることが判明した。一つは自励型パターン形成によるものであり,他の一つはタイヤのトレッドによる強制振動による摩耗である。前者のタイヤ偏摩耗現象の基礎的なメカニズムを解明するため,簡単な上下方向振動モデルによって偏摩耗の解析を行った。
|