多地点雷撃現象解明の1つの手がかりとして、雷雲下層の負電荷と複数の鉄塔との間で多地点雷撃が発生する場合を想定し、また、 送電線が平坦地を経過するとして、2組の平板対棒ギャップのギャップA及びBのギャップの長さはいずれも一定とし、一方のギャップBには、そのギャップのフラツシオーバ電圧より低い負極性直流電圧を印加し、他方のギャップAに一定上昇率の負極性直流電圧を印加してフラツシオーバさせた。その際、両ギャップともフラツシオーバする複数放電が発生したとき、両ギャップの高圧側平板電極の電位の変化と両ギャップを流れる放電電流を4チャンネルデジタルオシロスコープで同時測定した。また、複数放電が誘発される片方のギャップBの放電進展状況をストリークカメラシステムで観測した。その結果、(1)ギャップBの棒電極近傍の放電は、印加電圧が高くなるにつれ、コロナストリーマ放電から膜状コロナ放電に変わり、複数放電が発生するときのギャップBの棒電極近傍の放電は、膜状コロナ放電に転換している必要がある。(2)ギャップAがフラツシオーバしたとき、ギャップAの平板電極の電位は、棒電極の電位と同じになり低下するが、ギャップを流れる電流により棒電極の電位が上昇するため、平板電極の電位も上昇する。このようなギャップAの平板電極の電位を、平板電極側に挿入した抵抗を変えて変化させたとき、ギャップBを流れる電流の積分値(ギャップAを流れる電流がフラツシオーバしてから最大となるまでの時間積分)すなわち電荷量は、ギャップAの電位の変化が大きいほど増大する。すなわち、ギャップAの電位の変化が大きいほど、ギャップBの棒電極近傍の膜状コロナ放電による空間電荷が除去されやすく、その後の放電は進展しやすくなり、複数放電を誘発する機会が多くなる。
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