研究概要 |
先ず初年度として現実的な物理・数学モデル設定のための基本条件を探る事とした.実績概要は次の通りである: (1)すでに開発済みのリアルタイム観測記録装置システムを整備した.また前記の一部開発済みの観測装置の光学系に人工霧の中でのがいしの笠裏ひだ奥などのアークの観察を可能とするようグラスファイバなどを用いた方式の検討を進めたが,現状技術では極めて困難と判断した.物理・数学モデル検討のためパーソナルコンピュータを増設した. (2)世界的に直流がいしの汚損耐電圧特性につき検討が進められており,研究代表者内藤はCIGRE Task Force議長として全世界持ち回り試験をとりまとめている.今回試験結果を初めて総合的に解析した. (3)その結果としてがいしの汚損物を構成するものの中,不溶性物質の相違による影響も大きい事に今回特に注目した.これはアークの進展など本研究の基本に大いに関わる事柄であり,時間を割いて各種実験,観測を行った.その結果として,同じ付着密度でもトノコに較べてカオリンは低い表面導電率を与えるなど基本的な知見を得た. (4)従来国内外標準規格で汚損耐電圧特性に関して無視されて来た周囲温度の影響が,今回の研究により,無視出来ない事が判明した.また汚損耐電圧に対する気圧あるいは標高の影響の可能性がが大きく取り上げられているが,温度の影響で相殺される事を明らかにした. (5)従来の物理・数学モデルにおいては交流および直流の双方に対して,汚損がいしは純抵抗として取り扱われ,その上時間的にも動的でなく静的なものが殆どであった.今回の研究により,がいしが汚損,湿潤された場合には静電容量が乾燥時に較べかなり大きくなる事を明らかにした.今回はこの結果を活用して,先ず動的な交流物理・数学モデルを構成してコンピュータ解析を行った.
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