研究概要 |
本年度は,直流がいしの汚損フラッシオーバ現象に及ぼす各種要因のうち,昨年度までに明確にできなかった要因を実験的に評価するとともに,得られた結果を考慮した物理・数学モデルを構築し,交流の場合の数値解析を実施してモデルの妥当性の評価を行った.次の段階として,直流の場合へ展開可能の所まで到達した.実績の概要を以下に示す. 1.従来ほとんど行われていなかった直流汚損試験における漏れ電流波形の解析を行った.漏れ電流波形は,がいしの種類や試験法により異なること,条件によっては800mAを越える大きな電流が数秒間持続することが判明した.また,汚損フラッシオーバ試験時には,耐電圧試験時に比べて大きな漏れ電流の発生頻度が高く,従来推奨されている電源仕様では不十分であることを指摘した. 2.従来の物理・数学モデルでは,汚損がいしは純抵抗として取り扱われている.本研究では,静電容量をも考慮したモデルを構築し,交流の場合のより精度の高い数値計算を実施した.計算で求められた漏れ電流波形は実測波形と良く一致し,静電容量を考慮したモデルの妥当性が確認された. 3.2段避雷器の物理・数学的モデルを構築し,湿潤状態で交流電圧を印加してから乾燥状態へ移る過程における分担電圧の時間的変化を数値解析した.このモデルでは,がい管表面の抵抗やリアクタンスの時間変化や内部素子のインピーダンスも考慮した.計算の結果,分担電圧は場合によっては通常の電圧の1.8倍にも達することが明らかとなり,内部素子の劣化ひいては避雷器の損傷を起こす可能性があることが示唆された.
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