研究課題/領域番号 |
04650238
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 修 京都大学, 工学部, 助手 (70093333)
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研究分担者 |
原 武久 京都大学, 工学部, 助教授 (20026214)
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キーワード | 真空用絶縁スペーサ / 真空沿面放電 / 表面コーティング / セラミックスコーティイング / 表面電荷 / モンテカルロシミュレーション |
研究概要 |
パルスパワーを応用した荷電粒子発生器や加速器等の真空中で用いられる絶縁スペーサの耐電圧性能を向上させ、機器の信頼性を確保する目的で、実験的・理論的研究を行なった。真空中で用いられるスペーサの耐電圧性能は、その表面の帯電特性に大きく左右されるので、その帯電を抑制するために、二次電子放出係数の小さい三酸化クロムをスペーサ母材(アクリル等)に、プラズマ蒸着法(PVD法)でコーティングするのである。研究では、まず帯電の量と、その帯電の進行状況を把握するために、数値電界解析と飛行電子の軌導計算とを組み合わせ、また二次電子の放出方向の決定にモンテカルロ法を適用して計算機プログラムを開発した。帯電状況の把握は、従来準解析的に行なっていたが、このプログラムの開発によって、二次電子放出係数が1より小なる材料に対しても帯電の解析が可能になった。この解析の結果、三酸化クロムはスペーサの陰極側表面を負に帯電させることが明らかとなった。この負電荷によって、放電の開始点となるベき陰極側接合部の電界が緩和され、スペーサの絶縁性能が飛躍的に向上すると予想することができた。 本研究では、次に、PVD法によって実際に三酸化クロムをコーティングしたスペーサ試料を作成し、これを高真空中に配して電圧印加実験を行なった。この結果、このスペーサの初期絶縁性能は、コーティングのないスペーサと同等であるが、フラッシオーバ実験をくり返すと、劣化する傾向が現われた。この原因を解析したところ、電圧印加初期には、帯電と無関係に放電が開始すること、またこの過程で三酸化クロムのコーティング膜が損傷することが判明した。この損傷によって後続の電圧印加実験では、スペーサの耐電圧が低下することが明らかになった。 今後は、コーティング膜の熱的・機械的強度の向上に努め、本来のコーティング効果が得られるようにするための研究を継続する。
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