環伏陰極-アルミ箔陽極からなるダイオードを用いて、エネルギー300keVでビーム電流50kAの電子ビームを発生し、バーカトールによるマイクロ波発生実験を行った結果、次のことが明らかになった。 (1)陰極の直径が20、25および30mmの環伏電極(厚さはいずれも1mm)をもちいて、周波数領域が8-17GHzで最大出力が70MWのマイクロ波を観測した。 (2)マイクロ波の発生は、ビーム電流が臨界電流を越えた時に起こる。 (3)マイクロ波が発生するには適当な陰極-陽極間ギャップ長がある。 (4)マイクロ波の周波数は、ギャップ長を大きくすると低下する。また、陰極の直径を大きくしても低くなる。 (5)発生したマイクロ波の周波数は、ほとんどコヒーレントである。 (6)軸方向の外部磁場を印加すると、マイクロ波出力は小さくなり、磁場強度が1500G以上では発振しない。マイクロ波周波数は、外部磁場に関係なく一定である。 (7)ダイオードの残留ガス圧力を変化すると、マイクロ波周波数はほとんど一定であるが、マイクロ波の出力は、ガス圧力がp=1.5×10^<-5>Torr付近で最大になる。高ガス圧領域でマイクロ波が発生しないのは、ビーム電離プラズマが仮想陰極を中和するためであると考えられる。一方、高真空領域でもマイクロ波が発生しないが、この原因は明かでない。 (8)今後は、陽極前後のビーム電流、ビーム形、あるいはプラズマ発光等を計測し、マイクロ波発生とガス圧力及び外部磁場効果の原因、さらにはマイクロ波発生機構を明らかにしたい。
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