初年度にあたる平成4年度では、有機分子の立体構造因子と化学結合力を応用した自己構築的有機分子膜を吸着LB(Adsorption Langmuir-Blodgett film)法を用いて形成し、種々成膜条件とその単分子膜形成中および膜形成前後の分光特性を詳細に調べることにより、膜内での分子配列と置換基に依存した吸着分子量制御の確認を行うことを目的として実験を行った。その結果、以下のような成果を得た。 1.現有のクリーンルーム内のLB成膜装置と新規に導入した偏光顕微鏡を用いて、試料作製時と成膜した色素単分子膜の観察が行えるようになった。 2.P型半導体的性質を示すメロシアニン色素単分子膜にN型色素であるトリフェニールメタン系色素(ブリルアントグリーン、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、フクシンなど)を水相中から吸着した吸着LB単分子膜の吸着状態評価を行った結果、各色素に結合した置換基(カルボキシル基、アミノ基など)に対する吸着依存性が顕著に見られた。 3.色素吸着時における水面上単分子膜の表面圧変化と面積変化について詳細に調べた結果、表面圧等の作製条件は吸着量ならびに色素吸着状態に強く影響を与えていることがわかった。 得られた成果は吸着LB法が有機電子デバイスを実現する上で重要な作製手段と成り得ることを示したものである。さらに、今年度導入した偏光顕微鏡と次年度導入予定の測定温度、入射角度可変型の光学測定用クライオスタットによる評価により、詳細な分子間相互作用や配向制御性を調べることが可能であり、今後の研究進展が期待される所である。
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