有機分子の立体構造因子と化学結合力を応用した自己構築的吸着分子膜を吸着LB法を用いて形成し、その単分子膜の表面圧・面積変化に関する実験、および、偏光顕微鏡と光学側定用クライオスタットによる膜表面状態評価と光・電気特性の測定を行った。以下に得られた成果の要点を示す。 1.P型メロシアニン色素(MC)単分子膜にN型色素であるトリフェニルメタン色素(TPM)を吸着した吸着LB単分子膜の吸着状態評価を行った結果、各色素に結合した置換基依存性が顕著に見られた。 2.色素吸着時における水面上単分子膜の表面圧変化と面積変化について詳細に調べた結果、表面圧等の作製条件と吸着量、ならびに展開・吸着分子の分子間力と分子配列状態に強く影響していることが示唆された。 3.MC/TPM吸着LB膜の偏光光電変換特性を調べた結果、MCの主吸収波長光(λ=540nm)とTPM主吸収波長光(λ=630nm)の2光の偏光状態が試料面内で平行の時のみ負性光電特性を示すことがわかった。 また、MC/TPM吸着LB膜のフォトルミネッセンス測定を行った結果、発光性のTPM分子の発光スペクトル以外に長波長側に新しい発光ピークが観測され、近接分子間相互作用と思われる現象が見られた。 4.MC単分子膜にTPMを吸着したLB膜の吸着状態を偏光吸収測定、赤外吸収(反射)測定を行った結果、各分子面を基板に立つように配列し、かつ、各分子面を重ね合わせた状態で吸着していることが示唆された。 得られた成果は吸着LB法が有機電子デバイスを実現する上で重要な作製手段と成り得ることを示したものである。
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